kephyce 日々の記録

エレクトロニクスと音楽のお話

いろいろ<スルーレート>、<DSD>、<マルチマイク録音>

最近思うことのいくつか

スルーレート
某所で、最新録音機に使われているオペアンプのスルーレト、20V/μsで足りない、電源電圧が±12Vなので±15Vにするとスルーレートが改善される、、、
などという文章を見たので(笑)、、、スルーレートの計算式などググればいくらでも落ちていて、簡単な式なので間違っているサイトなど見たことも無い。教えてあげて計算してあげて、たとえ10Vp振らせても100kHz以上大丈夫だよ、といっても返事が無く(笑)

1.スルーレートは電源電圧とはほとんど関係ないです。
2.スルーレートは出力振幅に依存し、それが大きくなると不利です。
3.スルーレートが低いといっても、低速、というわけではありません。
  高速オペアンプでもスルーレートが低いものもあります。スルーレートは高速で振れる振幅の限度、と思っても良いです。小振幅なら高速ですが、大振幅で高速で振れなくなる、その制限がスルーレートです。
 高速なオペアンプでもスルーレートが案外低いものもありますが、それを低速のオペアンプとはいいません。
 高速のアンプをご所望ならば、群遅延特性がよい、GB積が大きく、高域まで位相回転が目立たないものをお選びください。スルーレートは大振幅で高速が必要な場合に気にするものです、といっても20V/μsもあれば、大振幅で十分ハイレゾ帯域までカバーできます。



<DSD>
1ビット大流行。いいですね。音は確かに違います。
でも、このデータ、シャノン先生のあみ出した信号処理の式、たとえばコンボリューション(畳み込み)などの演算は使えません。つまり、DSDデータのままのミキシングやフィルタができないことを意味します。PCM信号に一度変換せねば。
ここら辺の信号処理理論は、シャノン先生のような天才があみ出したわけです。これと同じ事をDSDデータに行うなど、そんな、簡単にできるわけ無いのです。
ディジタル編集をやっているエンジニアさんたち、あまりこのシャノン先生の功績を意識していないかも知れませんが、ちゃんと理解すると(って私はたいして深くまで理解していませんが(^^ゞ)、シャノンさんには足を向けて寝られないはず。凡人には導けない数式なわけです。
ということで、何か天才が出るか、大きなブレイクスルーが出ないと、PCM信号でできているような信号処理をDSDデータにそのまま適応はできません。
たぶん、こういったことは専門学校や音楽系の大学の録音の講義では習わないのだと思います。
幸い一応電子系でしたので、多少は学びましたので(^^ゞ。

<マルチマイク録音>
卒論がアレーマイクロフォンだったので判るのですが、複数のマイクで録った音をミキシングすると、
1.全体としてフィルタになる
2.全体として指向性を持つ
という事態に遭遇します。
私もマルチをなんどか経験しましたが、DCマイクの鋭い立ち上がりが見事に消えてしまいますね。そりゃ、遅延のかかった同じ音を合成したら、フィルタですから。
マルチマイクの、各楽器用にセッティングしたマイクは、極力、感度の鈍いものを使わざるをえないですね。
まぁ、そこらへんを体感的に「こうすればうまくいく」というのを会得しているのが優秀なミキシングエンジニアさんなのだとおもいます。
けどワンポイントで強烈にうまく録れるマイクが出現してしまうと、、、音色がやはり、濁っていくのが良くわかってしまいますね・・・