LTSpice 17.1 FRA モジュールを用いた解析② ループゲイン - 位相余裕シミュレーション
ループゲイン - 位相余裕シミュレーション
先のような解析より、このFRAモジュールはこっちのほうがメインで設定されたように思う。
しかし、、、こちらスイッチング電源の位相余裕には便利なんだろうな。
スイッチング電源はあまり使わないので、このFRAを使い、オペアンプで位相余裕の推定をやってみます。
FRAの Gain vs. Frequencyモードは、素子は基準の電圧源出力し、両端の対GND電圧の比をゲインとして表記するもの、のようです。
オペアンプはわざわざFRAモジュールを使わなくてもAC解析だけでループゲイン-位相余裕は、普通のアンプならば、シミュレーションできます。
ということで、オペアンプの位相余裕シミュレーションを、FRAモジュールとAC解析とで比較してみました。結果は微妙に値が違いますがだいたい似たようなものです(笑)。
FRAモジュールでの解析回路図が下図。
各設定は下記のよう。
そして、そのシミュレーション結果を以下。
gain_1となっていますが、FRA素子の両端の電圧の比なので、実質ループゲインが表示されます。
グラフ真ん中上のほうには自動的に位相余裕の値が入ります。
およそ、65.9degとなります。
次に、AC解析での、私が(独自に?)昔からよくやっている(たとえば私のホームページのこのページなど)<仮称>Aβ演算法でのシミュレーション回路図が下図。
全く同じ定数で、入力に電圧源を付けています。
シミュレーション結果は下図。
Aβ演算法といっても、普通のシミュレーションです。下記のように、
Acl、Ao、βを普通の非反転のオペアンプ回路のシミュレーションから簡単に抽出できるので、それらからグラフ上演算するだけです。多くの人が電圧注入法とかミドルブルック法とか使っていますが、シミュレーションはこんなんで十分でしょう。
V(out)/V(posin)=Acl はアンプのクローズドループ特性。
V(out)/{V(posin)-V(negin)}=Aoは、オペアンプのオープンループゲインを表示します。
帰還素子の伝達特性βは
β=V(negin)/V(out)
なので、このβとAoを掛け合わせたものがループゲイン
Aoβ= V(out)/{V(posin)-V(negin)} * V(negin)/V(out)
となります。
この演算を全部同じグラフに表示できて、とても見やすい。
Aoβの特性から、Aoβ=0dBとなる点にカーソルを持っていき、位相を読んで180degから引けば、位相余裕になります。
180-115.9=64.1deg
FRAの結果65.9degとちょっと違いますね。
ですが、ループゲインのグラフを見れば、ほぼ似たようなグラフとなっており、こちらはカーソルで値取得していますし(FRAはどうやっているかわかりませんが)、AC解析とトランジェント解析とのアルゴリズムの違いも鑑みると、まぁ、こんなものではなかな?(笑)
ほんでは、次いでにミドルブルック法という面倒くさい方法を使ってループゲイングラフを出して、位相余裕を求めてみます。同時に電圧注入法も見られます。電圧注入法はさきからやっているFRAと同じ考えですが、トランジェント解析かAC解析かのちがいです。
こんな回路です。
https://www.analog.com/jp/education/landing-pages/003/jp-web-lab/tnj-055.html
等、ネットを参照のこと。オペアンプが二つ要ります。
因みに下のオペアンプ回路だけでVout/Vfbのグラフを見れば、電圧注入法になります。
結果は下図。
図9、グラフ、黒の難しい式のほうがミドルブルック法です。
赤のほうは電圧注入法です
カーソル読み値でミドルブルックと電圧注入法と、ほぼ同じくらい、
180-116=64deg
と
180-115.7=64.3deg
です。グラフはほとんどこの二つ、重なっております。
ミドルブルック法は、電圧注入法で負荷抵抗が帰還抵抗より小さいときに出る誤差をなくす方法なので、今回はさほど重い負荷では無かったので差が出ていないのでしょう。
位相余裕をまとめると、
FRAモジュール:66.0deg
Aβ演算法:64.1deg
ミドルブルック法=64.0deg
電圧注入法=64.3deg
ありゃ、FRAモジュールが一番違う値でした。。。
まぁ、こんなもんです。
と、同時に、ネットでSPICEによる位相余裕を確認する方法を検索すると、みな、ミドルブルック法がでてくるのですが、そんな面倒な方法を使わなくとも、Aβを簡単に演算できるのですから、これでいいのではないでしょうか?
とおもうのですがね。。。
そもそも目安的な値のシミュレーションですので、こんなものなのだと思います。
このFRAモジュールは、スイッチング電源の位相余裕推定のために作られたようですね。
マイケル・エンゲルハート氏がぼぼ一人でLTSpiceを開発していたので、彼がADIを退社した後、大きな追加がLTSpiceにはないだろう、と思っていたのですが、今回、LTSpiceのFRA機能が追加されたことは、驚きでした。なんでも某半導体メーカーのシミュレーション担当がADIに入社したといううわさがあったので、彼がやったものかな?
ただ、エンゲルハート氏はSPICEのエンジンにまで手を入れていた。今後LTSpiceがそこまでやるんか?こうご期待。
。