kephyce 日々の記録

エレクトロニクスと音楽のお話

回路の素人さんマニアは恐ろしい・・・<追記>

いや、色んな意味で恐ろしいです。

たいていの場合、間違った回路を作ったりするのですが、希に、回路に詳しい人ではなかなか思いつかない回路を作り出すものです。恐らくその方は原理を理解していないと思われますが、動いてしまう(^_^;)。
その、希な方の件。

LA4さんというかたで「改造が趣味」というブログをかかれているかた。このページ、他に載っている、マイクユニットのJFETのソースを、トランスインピーダンス・アンプ(TIA)の入力に直結している回路が今日の本題。

他のかたのブログを参考にしたようですが、その方とはまったく接続して信号が流れる原理が違います。
そっちは単なるソースフォロワです(し、バランス回路に見えてシングル回路という妙なものです)が、LA4さんのほうは、初めて見たとき「なんじゃこりゃ」でした。
普通はやらないですよ、低インピーダンスの出力を、低インピーダンスの入力につなぐなんて恐ろしい事を。

ですが、「え、まてよ」と脳内シミュレーションを始めたところ、「じぇじぇじぇ!!」という結論に至って、茂木健一郎氏の「アハ」体験のごとく、脳内を電気が走りました(嘘です、が電子回路関連では今年一番の衝撃かも)。

ソースフォロワの出力インピーダンスはたかだか1/gm、今回シミュレーションで使った2SK330などは4msなので250Ωと、そこそこ大きな値となります。直結できますわな、ベース接地の入力に。
で、よーく考えますと、下図のようになります。 

J1のソースを、TIAの入力に直結すると、TIAの入力はバーチャルGNDでGNDとみなせてしまうので、ソースフォロワはそのままソースフォロワとして働きます。ですが流れていく電流はTIAでI/V変換されます。
入力ケーブルは、J1の自己帰還ループ内に入るので、低インピーダンスに保たれます。
TIAの入力も、オペアンプの帰還によって低インピーダンスに保たれますが、こちらの方は帰還抵抗を通しての動作なので、TIAの電流入力端子にぶら下がる容量Cの影響を受けてしまい、高域にピークを持ってしまいます。
この回路は、元々電流伝送の電流信号の送り出しがソースフォロワで低インピーダンスに保たれているので、ケーブルの容量Cの影響がとても小さくなります。Cの両端の電位が固定されている、ということですね。


つまり、ケーブルが長くても、ソースフォロワ側がケーブルのCをドライブしてくれて、TIAは高域にピークを持たない。

シミュレーションしてみましょう。まずトランジェント解析。

入力振幅がちょっと大きくなるとゲートの+側で例のP/Nジャンクション状態になって歪んでしまいますが、振幅が小さいとちゃんと動いていることが判ります。オフセットは電流を入力端子に注入することで0付近にしています。


TLOSSY MODELで3C-2V(75Ω同軸)のモデルを作ってTIAの入力に挿入してAC解析を行いました。


その結果。ケーブル長が1m,10m,100mで帯域に変化があまり無く、高域のピークもありません。長いと反射は起きているようですが、73Ωの抵抗で反射は極力抑えています(これがないともっと大きな反射が出る)。

と、ほーら、ね。オペアンプTIAの欠点、長い入力ケーブルで高域にピークが出て場合によっては発振するような事はこれで無いのです!!


ほんと、これは大発見。過去のブログである、「MJ3月号電流伝送パワーアンプ」の下の方の図の三種類の伝送方法、どれにも当てはまりません。

インピーダンスで出力する電流出力

なんです。こんなの、私は過去、考えたことも無いです。素人さんとおぼしきLA4さんのアイディアであるところが凄いわけです。

しかも、TIAの電流入力端子がJ1の帰還ループに入っているわけです。こんなの初めて。

これは応用しがいがあります。たとえば、TIAの+入力端子に若干のバイアスを加えると、J1の動作点を微妙に変えることができるはず。

また、J1がJFETじゃなくてBiTrにすることも考えられます。

どや。エミッタフォロワのくせに(^_^;)、出力は電流入力に入れるのだ!!(爆)。
考えてみれば入力のRはV/I変換、だと考えれば実に、単なる反転アンプ。
抵抗の前に長いケーブルが来る、と考えれば自然です。


このネタ、今後色んな回路に(仕事に趣味に)使わせて頂きます。









13.12.15追記

TIAの電流入力の端子が、出力のソースフォロワの帰還ループと、TIAの帰還ループの両方に入っているのが特徴です。
すると、TIAの入力に低インピーダンスの回路がぶら下がる、となると、通常はノイズゲインが増大する・・・
ところが実際にはそうなっていないようです。
ソースフォロワの帰還ループですが、外から見ると低インピーダンスだが、帰還ループの中でソースを見た場合はハイインピーダンスのまま、です。
つまり、TIAの入力端子からソースを見ると、ハイインピーダンスに見えるのだという解釈と考えています。