kephyce 日々の記録

エレクトロニクスと音楽のお話

マイク・ヘッドルーム

その昔、キャノンのゼロワンショップのCMに出ていたのは、マックス・ヘッドルームでしたが、この記事はマイクのヘッドルームの話。

初段のJFETは、以前の記事でVgsが+0.3Vくらい以上になるとG→SがPNジャンクションで電流が流れてしまうことは書きました。
たとえば、ECM用とうたっている現ルネサス2SK1109も静特性図は珍しくVgsが正の領域まで書いてあるのですが、結局+0.2Vとちょっとくらいのところで止まっています。ようは、ECM用とて、その程度、ということですね。

で、では実際のマイクの振動板はどの程度の電圧が出るのか?
業界では、dB SPL値で表すのが一般的ですが、まだDCマイクや自作マイクを測定してすりあわせていませんので、経験値から。(一回、基準マイクと同じ音圧で比較すればすぐ判ってしまうのですが。)

過去の経験、数回の演奏会で、ADCのレベルメーターと、その時のVRの位置、アンプのゲイン等から逆算して導き出している値が、
打楽器ドンジャラ鳴るフルオーケストラで天井吊り位置で、おおよそ0.6Vpp〜0.7Vppになります。(兎に角、打楽器がもっとも大きな音を出します)
こらがマイクカプセル、ショップスMK4、AKG CK61-ULS、ほぼ同じくらい。

この事実から、ショップスやAKGでは、金田さんの様なJFETにバイアスを掛けず、自己バイアス領域で使う方法は、だめ、と言うことになります。0.7Vppということは+0.35Vに達するということです。小編成の演奏ならなOKでしょう。作っても、それを理解しておくことです。
さらに大きな音もあり得ます。天井吊りでオケが取れればいいわけではありません。では、どの程度まで、入力で飽和しないように設計するか?がヘッドルームという考え方です。
次回の私のマイクは、この0.7Vppより数dB上に考えておきます。そうすれは確実にオケは撮れるでしょう。では打楽器アンサンブルは大丈夫か?というと疑問ですが(^^ゞ。
ちなみに、旧来のDCマイクでは、この振動板0.7Vppというのが限度です。ほとんどマイクアンプ出力端で振り切れています(^_^;)。→13.11.12、訂正、0.7Vppで最大振幅の6-7割くらいでした。確認ミス、すみませんでした。

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ところで話は変わって、差動の話。
簡単に自己バイアスを差動にする方法は、、、とても難しいのですねぇ。たとえば、この図のような回路を組んでも、シミュレーションするとご覧の通り、アンバランスな出力にしかなりません。




出力波形は、下はJ1とJ2のドレイン電流。全然違いますでしょ。
上はその二つの和。
差動にすると、和はほぼ一定になるはずですが、ゆんゆんしていますから(^^ゞ、全然差動動作していないと言う事です。ちょっとした工夫で上手く行く可能性もあるのですが、部品選定が大変だと思われるので、スタンダードにきちんとゲートにバイアスを掛けた差動にする方が良いです。
★なんでこの回路で差動動作してくれないのだと思います?★
私の回路はそう(=きちんとした差動動作)なっています。旧来のDCマイクも、±電源なので、自然とバイアスがかかっていますね。