kephyce 日々の記録

エレクトロニクスと音楽のお話

MJ3月号電流伝送パワーアンプの位相補正

MJ3月号、金田さんの記事中、
「ステップ型位相補正では効果が無く」
と言う言葉に、
解せぬ(時代劇の高橋英樹風に)
と思って、いろいろシミュレーションしてみました。
できないのなら何でできないんだろう??

で判ったのは、できます、ステップ型でも。

まず、マイナス入力にぶら下がるケーブルの容量でできるポールは、
本来のアンプのポールより低いのですね。
ですので、ミラー効果の効いた二段目差動と出力Tr上側ベースの間の
R+Cの位相補正は小容量で効いてきます。

初段のステップ型位相補正ですと、かなり大容量でポールを下げてやらな
いと効いてこないんですな。

↓がシミュレーション回路。
I/V変換回路のゲイン位相特性は、私もいろいろと過去に書きました。
けど、結局はノイズゲインで解析すれば良く、詰まるところ通常の非反転
アンプにI/V変換の条件を全て盛り込んで特性を見てやればいいのです。

3月号の定数とかなり違いますが、これは回路が別のシミュレーション
用にファイルに入っていたので流用しただけで、傾向は同じだと思います。

で、いろいろステップ位相の定数を徐々に変えていくと、↓のような
グラフとなりました。十分に位相補正ができています。
パラメトリック解析で、一回目が58Ω+10pF、二回目が58Ω+6800pFと
大容量。

見にくくて済みませんが、上の黄色いカーブが位相補正後のオープン
ループ。□が位相補正10pFのクローズドループ、○が位相補正6800pFの
クローズドループ。ちゃんとピークが無くなっています。
その代わり、黄色のグラフを見れば判りますが(見えにくくて判らないか?)
ワイドラー特性になっちゃっています。
金田式完全対称の回路は大抵1stポールが可聴周波数より高いのですが、
これはど真ん中(≒2kHz)。
そう、いわば「ワイドラー風金田式」です(笑)。
ただしオープンループゲインは小さいですけど。

音は、判りません。高域での帰還量が減るので影響はあるでしょうけど。
実際のMJ3月号ですと、初段差動のドレイン抵抗が小さいので、
位相補正のCはもっと大きくしないとだめでしょう。

ちなみに、位相補正が適切値(6800pF)とそうで無い場合の
過渡応答シミュレーションは↓です。

ま、こんな感じで、過渡応答が綺麗になるとちゃんとf特もピークが
無くなります、ということで。それはシミュレーションでも見られます。





追記:2012.2.16 22:45

本解析は、単にステップ型でも位相補正はできると言うことであって、
アンプの他の性能一切を満足しているか、はては音が良いかどうか、
という事までには言及していませんので、念のため。


追記:2012.2.25 21:50

C3によるポールの周波数fpは

fp=1/(2π*C3*R14//R15)

となると思います。
帰還抵抗を変えると、fpが変わりますね。