kephyce 日々の記録

エレクトロニクスと音楽のお話

入力の容量でI/Vや反転アンプの高域ピークを出ないようにする・・・2

つづき、

●そもそも、トランスインピーダンス・アンプは、なんで入力にぶら下がる容量Ciでピークが出るのか?

トランスインピーダンス・アンプの入力インピーダンス特性はL(インダクタンス)特性を示す

ので、その入力端子にぶら下がるCiと並列共振するのです。

■シミュレーション実験5 トランスインピーダンス・アンプの入力インピーダンス特性
OPA656にてやってみました。

図2-1


図2-2


図2-1の上のようなトランスインピーダンス・アンプでシミュレーションしました。結果は図2-2の真ん中です。
Cfを振ってやると、Cfが小さいときには入力インピーダンスはまさにL特性を示すことが割ると思います。
Cfが大きくなると、L特性が抑制されて高域ではLとは見なせない特性になっていきます。
(図2-2の上は入力端子に発生する電圧です)
図2-1下に、シミュレーションで適当にもとめたLの等価回路と、図2-2下はその特性です。
比較的一致しています。
また、理論的数式で、入力インピーダンスZiは
Zi=Rf/(2π*GBP)  ・・・(2-1)
になります。(Cfが無い場合)。
Rf=10k、GBPはOPA656は230M(ただしノイズゲイン10倍以上)とデータシートにあるので計算すると6.9μH、、、グラフを見て作成した値とは倍くらい違いますが、トランスインピーダンス・アンプのノイズゲインは通常1なので、そこらへんで計算が合わないのかな、と(オーダーは合っていますが)。

と、このL成分とCiとの並列共振にてピークが出て、これは、反転アンプ系(前記事図3回路)でも同様です。違いは、R1がオペアンプの入力インピーダンスZiに並列に入ってくるので、R1,Ci、Ziが全部並列に繋がった状況の共振になるだけです。
それと、周波数特性的には、トランスインピーダンス・アンプのノイズゲインが(1+Rf/R1)になるので増大するので、周波数特性が落ちます。これによってピークは抑制されますがfoは変わらないので同じ周波数にピークが出てきます。


次回に続く・・・・


入力の容量でI/Vや反転アンプの高域ピークを出ないようにする・・・1

久々、記事書きます。

表題のタイトルです。I/Vはトランスインピーダンス・アンプと記します。
ピークを出ないようにするにはどうするかです。

実は巧妙な方法で大きな入力にぶら下がるCで高域にピークが出ないようにできるのですが、そのはなしは後回し
まずは基礎。

トランスインピーダンス・ゲインZfs帯域幅BWは図1において、

BW≒1.4×√[GBP×1/{2πRf(Ci+Cf)}] [Hz] ・・・(1)

Cf=√{Ci/(2πQ^2×GBP×Rf)} ・・・(2)
ただし、Qはfi≒GBP/1.4の共振鋭度。

Q=1/√2でフラット周波数特性になる⇒つまり、ピークは出ない

つまりCf= √{Ci/(π×GBP×Rf)} ・・・(3)
がCfの適切値。これよりCfが大きくてもピークは持たないが帯域が落ちる。またこれ以上大きなCfは1次のフィルタの特性になる。つまり、トランスインピーダンス・アンプは基本的には二次特性になる。
または、位相余裕45°を持たせるにはCf(45°)=√{Ci/(2π*Rf*GBP)} ・・・(4) (ADA4817データシート(14)式、等より)
同60°を持たせるにはCf(60°)=2√{Ci/(2π*Rf*GBP)} ・・・(5)

ただし、
Rf:帰還抵抗
Ci:入力にぶら下がる総容量
Cf:帰還容量
GBP:アンプのGB積

■シミュレーション実験1 トランスインピーダンス・アンプ
OPA627(GBP16.7MHz)使用、Rf=100k、Ci=500pFのトランスインピーダンスのシミュレーション、
Cfを、上記式より、位相余裕45°:6.9pF、フラット:9.8pF、位相余裕60°:13.8pF、50pF
とし、
それぞれ、カットオフ292kHz(若干ピーク有り2次特性)、228kHz(ピーク無し2次特性)、148kHz(ピーク無し2次特性)、32.4kHz(ピーク無し1次特性〜二次特性へ)

と、ピークが出ないCi,Cfは計算できます。

図1

図2


図2上はオープンループ特性です。下がトランスインピーダンス・ゲインの特性です。

■シミュレーション実験2 反転アンプの場合どうなるか?
下図3のような反転アンプの場合を考えます。
ノイズゲイン11倍(入力抵抗R1=10kΩ)にてシミュレーション。
ほか、電流源⇒電圧源として行う。ほか定数はI/Vアンプと全て同じ。


各Cfでそれぞれ、カットオフ273kHz(若干ピーク有り2次特性)、206kHz(ピーク無し2次特性)、134k(ピーク無し2次特性)、29.4k(ピーク無し1次特性〜二次特性へ)

帯域が若干落ち、ピークが小さくなっていますが、ピークが出ないようにするには(3)式による値であっています。
これはノイズゲインが11倍でクローズドループの帯域が落ちていることに起因しているものと考えられます。

◎ちなみにCf=50pFは金田氏のMJ2018/12、P94の、
「RfCf=RoCcが成立すると特性がフラットになる」
記事中の式による計算値からです。Ro=10k、Cc=500p、Rf=100kで計算しました。
たしかにフラットにはなりますが、
1.もっと高域でフラットに持って行ける
2.この数式が成立するポイントでなくてもフラットになる

ということで、この式はどこからでてきたのでしょうか?


図3

図4


つまり、トランスインピーダンス・アンプでピークが出ないようにする条件は、図3のような反転アンプでも同じである。

■シミュレーション実験3 広帯域オペアンプでは
OPA656というJFET入力の広帯域オペアンプ(シミュレーションモデルのGB積=350MHz)をつかうと、Cfが大きいときにより、1次特性が目立ちます。
図5

図6

ですが、このような広帯域オペアンプでも、計算通り、位相余裕45°では若干のピーク、Q=1/√2ではピーク無しのフラットになります。これでピークを出さない条件が上記数式で正しい、といえると思います。

■シミュレーション実験4 では、入浴容量を大きく振ってやると・・・・
Cfを0.5pFに固定して入力容量を大きく変化させてみました。
これが摩訶不思議な特性(笑)

図7

図8

あれあれ?Ciが大きくなればなるほどピークが大きくなるんじゃ無いの??(笑)
Ciが30000pFではピークが無くなっている!!

この謎はあとあと書く記事にて説明します。
ヒントがこの図8に書いてあります。




某FBのお話しからCRDのメーカーリスト

先日、某FBの某所でLEDをどうドライブするかの話題があって、CRD(CLD/定電流ダイオード)の話題があがり、ちょっと前にメーカー名を調べ上げまして、日の目を見ていない資料がありましたので、
思い立って書いておきます。
CRDは、基本的にはJFETの自己バイアス領域で使った物です。
ダイオードとは名の付くものですが、逆向き電流は制止されず、大電流が流れてしまいますので、注意が必要。
逆向き制止ダイオード内臓のタイプもあります。シンボルが違うようです。あとは、駆動電圧以上掛けないとちゃんと定電流動作してくれないので、そこが注意点ですか。
詳しくはぐぐったり書籍読んだりしてみてください。
ちなみに私はCentral Semiconductorのが入手しやすく、±15%と若干精度が高いので使っています。
お値段も高いのですが、ちょっと±20%誤差ですと、大きいってかんじですねぇ。
最近はLED点灯専用のものが出てきています。(それが故、若干活況気味です)



ワオンレコード新譜宣伝です

私が金田さんより3年早くバランス電流伝送マイクを開発したものを用いた、ワオンレコードさんの3月リリースの新譜
平野一郎《四季の四部作》春夏秋冬 吉川真澄−声 WAONCD-330
が、レコード芸術2018年4月号で特選に選ばれStereo誌2018年5月号で「変態ソフト選手権!」の「今月の一番」に選ばれました。
ものすごいS/Nであると、評価していただいております。

また、改造型金田式(ショップス無指向・セパレートタイプの金田式)をもちいた、これもワオンレコードさんの「ひとひらの水彩 in Watercolors」松原智美(クラシックアコーディオン)WAONCD-340が、これもレコード芸術2018年5月号の特選Stereo誌2018年5月号の変態ソフト選手権のエントリーに入っています

二つのCDで連続して快挙です。

ご興味のある方は是非。特にバランス電流伝送マイクは、金田式のバランス電流伝送よりかなりスーパーローノイズになってい(るはずです)。

amazonでは売り切れ?のようで、ワオンレコードさんに直接お問い合わせください。

C960 spice model

お久しぶりです、こんにちは。

最近、LTSpiceを使う事も多くなってきましたが、
PSpiceのサイトを見ていたら、フリーの機能制限版のダウンロードサイト
C959/C960のモデルがあるようなことが書かれておりまして。
http://pspice.de/discrete/bipolar-transistor?page=31

私はダウンロードしていませんが、ご興味のある方は。
ところでたぶん、このモデルは昔と違うライブラリフォーマットで、LTSpiceなどには移植が必要だと思います。つまりそのままコピペでは無理かも。

トラ技2017/9月号p69「超低雑音アンプ」

いや、おじさん工房の小川氏に先を越されました(^^ゞ。

トラ技2017/9月号p69「誰でも作れる0.35nV/√Hz超低雑音アンプ」
ほぼ同等のローノイズアンプを作っておりました。

さてさて(笑)。小川氏とは面識がありますのですが。

この記事中でのポイント、私が考えるに、二点。

1.初段は差動にするよりシングルの方が入力換算ノイズが1/√2になる。

2.ゲートに電圧帰還を掛けるより、ソースに電流帰還を掛ける方が、ノイズが1/1.2〜1/1.5(電圧比)になる。


の二点です。あとはJFETパラって、増えた帰還容量の影響をカスケードで減らして、DCサーボで安定化して、等々は方策です。

小川氏の記事中に上記2の話が出てきませんが、ゲート〜ソース間のJFET内部で発生するノイズが、電圧帰還ではフィードバックループの中に入るのですが、電流帰還、つまりソースに帰還を掛けると外に出ます。
その関係のようで、入力換算ノイズの出方がこの両者ではちがうのです。

私の趣味のHPに、真空管での同様の解析を載せていますので参考に。

さて、私のトラ技に書くネタが減ってしまいましたが(笑)、ま、ちょっと変えた形でまとめて書けたららいいなと思います。

ただ、このアンプはよくまとまっていて、凄いですね。これだけ沢山のJFETをパラるのが、またまた。


あ、トラ技記事中のADA4898は低周波ノイズがかなり多いようです、、、、。確かにノイズは少なく広帯域ですね。つかいようです。。。